卵巣腫瘍
子宮の左右に卵巣は存在し、大きさは通常2〜3㎝程度です。卵巣腫瘍はこの部位に腫瘍が発生する疾患です。
良性のものから悪性のものまで種類は様々です。
卵巣のう腫
卵巣のう腫とは、卵巣に発生する腫瘍の総称です。卵巣のう腫は良性・境界悪性・悪性腫瘍があります。
腫瘍が大きくならないうちは自覚症状がないことがあります。
腫瘍が大きくなると、お腹が張ったような感じ(腹部膨満感)や腰痛、下腹部痛が見られます。中にはお腹の辺りにやわらかいしこりを触ることができる人もいます。
またサイズが大きくなり過ぎると、卵巣の根元がねじれ、茎捻転という激しい痛みや嘔吐が出る可能性があります。
4つの卵巣のう腫
卵巣のう腫はさらに4つの種類に分けられ、発生要因や、その嚢腫の中身も様々です。
漿液(しょうえき)性嚢腫
思春期以降の10〜30代の若年層の女性に好発する、非常に発生頻度が多い腫瘍です。
内容物は漿液というサラサラな液体が溜まっています。
粘液性嚢腫
主に閉経後の高齢女性に好発する腫瘍です。
内容物はネバネバした粘性の高い内溶液が溜まっています。
しばしば巨大化することがあります。
皮様性嚢腫(デルモイド)
20〜30代の女性に好発する、奇形種の一種です。
胚細胞にできるため、内容物には人体の元となる髪の毛や歯、脂肪などの組織が貯まることがあります。
閉経後、稀にがん化することがあります。
子宮卵巣内膜症性嚢胞
(チョコレート嚢腫)
30〜40代の女性に好発する、子宮内膜症の1つです。
子宮内膜が卵巣部に異常発生することで発症し、月経を繰り返すことで増殖を繰り返します。その結果、卵巣内部で内膜組織や血液が変色してチョコレートのような色になっていることが名前の由来です。
40代を過ぎるとがん化のリスクが高まります。
卵巣のう腫の原因
残念ながら、原因は解明されていません。
チョコレート嚢胞は子宮内膜症の一種ですが、子宮内膜症の原因はわかっていません。
皮様性嚢腫は、胚細胞である卵子が無受精で勝手に分裂を初めてしまうことがきっかけで生じるとも考えられています。
卵巣腫瘍・卵巣のう腫の検査
卵巣腫瘍・卵巣のう腫が疑われる場合、まず問診・診察を行います。
腫瘍の大きさ、内容物によってはさらに詳細に検査するためMRIやCTなどの画像診断を活用し、良性、悪性かの判別も同時に行います。
卵巣腫瘍・卵巣のう腫の治療法
検査によって卵巣腫瘍・卵巣のう腫が良性であると判断した場合には、経過観察となります。定期的な検診を受けていただき、大きさや見た目に変化がないか観察していきます。
もしサイズが大きくなってきた場合は、病巣部位のみを切り取る手術などを検討します。
もし悪性の可能性が否定できない場合、サイズが大きい場合、症状がある場合には、原則として手術療法が行われます。手術によって病巣部位の摘出と、悪性腫瘍の確定診断を目的としていて、良性だと判断された場合には卵巣を温存し、病巣部位だけを摘出します。
近年では低侵襲の腹腔鏡手術が主流となっています。
手術が必要な場合には、連携医療機関をご紹介させていただきます。